小説―新天地を求めて-9
商談もうまく行き、国内向プラント用機械の今後の発注の約束を取り付け、現在引き合い中の海外プラント向けも、
見積引き合いを貰う事を約束して重工業を後にした。
ソウルへ着いたのは午後9時ごろで、ホテルの近くで食事をして、明日の予定を確認して2人と別れて部屋に入つた。
部屋に入るとキム、ヨンジャがソファーに座って写真を観ていた。
「それ誰の写真ですか?」
「北へ住んでる母と兄弟たちです」
「私は、韓国で成果を上げて本国へ帰って家族の皆んなに、良い暮らしをさせてやりたいと思って頑張っています」
仙太郎が写真を覗くと、貧しそうな親子の姿が映っていた。
「キムさんへ少し聞きたい事があるけど、いいかな?」
「いいですよ、何でもどうぞ」
「僕が移動している時に、何者かに観られている気がしているんだけど、北のメンバーと関係ないのかな?」
「それは、貴方が私たちの行動を韓国側へ通報しないか、見張っているのだと思います」「私は、明日の午後の便で日本へ帰ります」
「そうですか、これからも宜しくお願いします」
「これからの連絡先を教えてください」
仙太郎は正直教えたくなかったが、キム、ヨンジャの家族の事を思うと協力せざるを得なくなっていた。
「これが会社の電話番号です」
「名前は韓国のキムさんと名乗って電話をお願いします」
「分りました、ごめんなさいね、貴方にこんなにご迷惑を掛ける事になってしまって」
「これも何かの縁でしょう、貴女との出会いも運命かもしれませんね」
こうやって仙太郎とキムヨンジャは、韓国での再会を約束して別れて行った。
次号予告 会社に着いた仙太郎を待っていたのは?
コメント